体外受精・顕微授精の年齢別妊娠率
体外受精、顕微授精で出産に至る確率は、40歳で約9%。

体外受精、顕微授精の年齢別妊娠率
体外受精、顕微授精で出産に至る確率は、40歳で約9%。
文:Coel運営チーム
掲載日:2017年10月4日
ごく一部の「なかなか妊娠できない人たち」だけが行うものではなくなった不妊治療。2015年に生まれた子供の5.1%、19人に1人が体外受精・顕微授精によって命を授かっており、その数・比率ともに年々増え続けています。
毎年日本産科婦人科学会が発表している、生殖補助医療に関するデータをまとめてみました。
体外受精の年齢別件数
2015年に体外受精・顕微授精を行った人のうち、最も多かったのは40歳、次いで41歳となりました。
海外ではこの“ピーク年齢”が35歳前後と言われており、日本の体外受精の成功率が低い要因の1つとなっています。
5年前のデータと比較すると、この“体外受精の高齢化”の深刻度がよくわかります。
体外受精の件数は、242,161件から424,151件へとこの5年間で倍近く増加しており、下記の通りその牽引役は高齢患者さんの治療件数の伸びです。特に39歳以上の治療件数が増えています。
体外受精の年齢別成績
体外受精の成功率は、当然個人差があるものの、マクロトレンドで見れば年齢と反比例して低下していきます。
妊娠数を総治療周期数で割って算出した妊娠率は、その厳しい現実を如実に表しています。
高額な費用を払って体外受精・顕微授精を行っても、30歳で27%、35歳で24%、40歳で15%、45歳ではたった3%しか妊娠できないのです。
体外受精・顕微授精のためのプロセスは長く険しいもので、幾つもの関門を突破する必要があります。
そもそも良質な卵子が(複数)採卵できるか?というところから始まり、精子との受精に成功するかどうか、受精後の培養がうまくいき、子宮に戻せる状態まで育つかどうか、凍結する場合は凍結に耐えうる状態かどうか、そして、それを移植、つまり子宮に戻した時に着床してうまく育つかどうか。
15個とれた卵子のうち3個が未成熟だったため成熟卵は12個、そのうち8個が受精し、初期胚まで育ったのは6個、その後胚盤胞まで育ったのは4個・・・なんてことはざらにあります。
15個採れているだけ良い話です。これがそもそも1,2個だったり下手したら1個も採れない場合もあります。
このケースで、4個(または、初期胚で移植するなら6個)できた胚を毎月1-2個ずつ移植することになりますが、この移植当たりの妊娠率は以下の通りです。
移植できる段階まで、幾つもの関門を突破して育った受精卵なので、その妊娠率は“治療周期当たり妊娠率”よりはぐっと上がりますが、それでも35歳で38%、40歳で26%と決して明るくない数値が並んでいます。
年齢別の生産率・流産率
言うまでもなく、不妊治療のゴールは、妊娠することではなく元気な子供を出産すること。忘れてはいけないのは、妊娠しても流産する確率が“それなり”に高いということです。
体外受精・顕微授精で妊娠した人のうち、35歳で20%、40歳で35%がその後流産しています。
誤解してほしくないのですが、この数値は自然妊娠と比べて高いわけではありません。虎ノ門病院産婦人科の調査によると、妊婦さん全体について、30-34歳で10%、35-39歳で約21%、40歳以上で約41%が流産を経験しているとのことで、上記の体外受精による妊娠に限った場合とほぼ同水準です。(出所:母体年齢と流産 周産期医学 vol.21 no.12, 1991-12。リンク先は厚生労働省の資料)
生産率、つまり、1回の治療周期から出産までたどり着く確率は、35歳で18%、40歳でたったの9%です。
高齢であればあるほど、採卵に成功する確率、移植に成功して妊娠する確率、無事に出産する確率、どれも下がっていきます。
妊娠率の統計データを見るときに気を付けるべきこと
この年齢別の妊娠率のデータは、自分が体外受精・顕微授精をする際の成功率の目安として参考にすることができます。
しかし、あくまでもマクロデータ。妊娠率は個人差があるということを忘れないでください。
同じ35歳の女性のデータであっても、何も問題がなく良質な卵子がたくさん採れる人、AMHが低くてなかなか卵子が採れない人、子宮内膜症のある人、また、男性側の精子のクオリティが高い人、低い人、いろんな人がいます。不育症で、着床までは無事に到達できてもその後何度も流産を経験している人もいるでしょう。
様々な条件の人をひっくるめたデータであるということを踏まえたうえで、自分に当てはめて考えてみてください。
<参考>以下、年齢別の詳細データです。
年齢 | 移植当たり妊娠率 | 治療周期当たり生産率 |
---|---|---|
20歳以下 | 33.3% | 6.1% |
21歳 | 64.3% | 29.0% |
22歳 | 42.9% | 19.3% |
23歳 | 38.0% | 19.5% |
24歳 | 48.9% | 20.3% |
25歳 | 44.7% | 21.1% |
26歳 | 43.6% | 21.4% |
27歳 | 42.9% | 21.9% |
28歳 | 43.2% | 21.8% |
29歳 | 41.9% | 21.8% |
30歳 | 42.1% | 21.5% |
31歳 | 42.5% | 21.6% |
32歳 | 40.8% | 20.9% |
33歳 | 39.6% | 20.0% |
34歳 | 38.9% | 18.9% |
35歳 | 38.1% | 18.4% |
36歳 | 37.2% | 17.3% |
37歳 | 34.8% | 15.5% |
38歳 | 32.0% | 13.5% |
39歳 | 29.2% | 11.2% |
40歳 | 26.1% | 9.1% |
41歳 | 21.4% | 6.5% |
42歳 | 17.6% | 4.5% |
43歳 | 14.4% | 3.0% |
44歳 | 9.8% | 1.5% |
45歳 | 6.9% | 0.9% |
46歳 | 5.5% | 0.7% |
47歳 | 2.7% | 0.2% |
48歳 | 2.3% | 0.0% |
49歳 | 4.2% | 0.3% |
50歳以上 | 3.6% | 0.6% |
(出所:日本産科婦人科学会 平成28年度倫理委員会 登録・調査小委員会報告)