卵子を凍結したら、
安心できますか?

38歳・独身で卵子(未受精卵子)を凍結した女性へのインタビュー。

卵子2個の写真

卵子を凍結したら、安心できますか?

38歳・独身で卵子(未受精卵子)を凍結した女性へのインタビュー

取材・文:Coel運営チーム

掲載日:2018年2月2日

加齢による生殖能力の低下を防ぐため、健康な若い女性が将来に備えて卵子を凍結しておくことを社会的卵子凍結と言います。これについて、2013年に日本生殖医学会がガイドラインを発表し、39歳までの採卵・凍結と44歳までの使用を事実上認めることとなりましたが、採卵及び凍結保存にかかる高額な費用や、受精卵と比べて低い妊娠率(日本産科婦人科学会の発表によると、2015年の臨床成績では未受精凍結融解卵の移植当たり妊娠率は11.1%で、凍結受精卵の場合の同33.2%との差は明らか)、結婚・出産を先延ばしにするだけという批判などから、実施できる病院の数は少なく、利用者の数もそれほど拡大していないようです。

今回、38歳で卵子を凍結した加藤さん(仮名)のお話をお伺いしました。加藤さんは仕事に打ち込む東京都内在住の独身女性で、結婚・出産願望はあるものの、現在パートナーはいません。今回、卵子凍結に踏み切った理由は何だったのでしょうか?そして、凍結を終えて何か変わったことはあったのでしょうか?

 

——加藤さんはいつ頃から卵子凍結のことを考え始めたのですか?

卵子凍結を実際にする1年位前から考え始めました。

 

——そのきっかけとなった出来事は何だったのでしょうか?

失恋です。これ以上合う人はいないだろうと思っていた人とうまくいかなくなり、現実的に考えると今できることをしておく必要があると思いました。

 

——加藤さんはこれまで順調にキャリアアップを重ねて、やりがいのある仕事に就いています。プライベートでも、旅行や食事・お酒、そして趣味を楽しんで、とても充実した日々を送っていますよね。それでもやはり、結婚と出産は重要ですか?

はい。私は自己実現欲求が非常に強い人間です。「結婚」や「出産」についての「形」にはこだわっていませんが、キャリアにおける目標を一つ一つ達成していくにつれて、本能的にパートナーとの安定した関係、そしてまだ望めるならばそのパートナーとの間に子供が欲しいと思うようになりました。人として成長していくために、自分自身が本能的に求めているのだと思っています。

 

——子どもを産み育てるということは、自分の成長のために必要なことですか?

必須だとは思っていません。子どもがいたら成長機会は増えるだろうとは思うけれど、子どもがいなくても人として成長することはいくらでもできるでしょう。むしろ、成長のためにパートナーの必要性を感じています。一人で生きていくのは自分には無理だということに気づき、一人で生活している限り人としてさらに成長していくことは難しいと思っています。安定した関係のパートナーがいないということ自体、自分が人としてもっと成長する必要があるということだと実感しています。

元々子どもがすごく好きで、いつかは欲しいと思っていました。だから、ちゃんとしたパートナーができたらその人との子どもが欲しくなるだろうと思い、今回卵子凍結をしました。

 

——卵子を凍結するということは、基本的には将来それを使って体外受精・顕微授精を行うということです。こうした高度生殖医療への抵抗感はありませんか?

今は、選択肢の一つという認識なので抵抗感はありません。実際に体外受精を行う際に、高度生殖医療というもの、子供がどれだけほしいと思うのか、パートナーがどう考えるのか、ということを改めて考えることになると思います。

 

——おっしゃるとおり、実際に凍結卵子を使用する際にはパートナーの同意も必要となりますね。ご家族や友人には卵子凍結のことを話していますか?(話していたとすると)どんな反応がありましたか?

父や母には話す機会がなかったので話していません。妹や友人には話しました。肯定的な反応しかありませんでした。ただ、全員話した相手は女性です。

 

——情報は本や説明会で集めたのですか?

インターネット上での情報収集のみでした。

 

——どのようにしてクリニックを選びましたか?

卵子凍結を行っている病院のホームページを幾つか見比べたうえ、勤務地から通いやすいクリニックを選びました。

 

——治療に際し、医師からはどのような説明がありましたか?

未受精卵が非常に不安定で卵子を凍結しても受精できる可能性がとても低いこと、またこの年齢では本来はすぐに不妊治療をすることをすすめる、と言われました。

(注)凍結した未受精卵の解凍後の生存率は40-70%程度と言われており、受精卵の場合と比べるとその生存率は低い。また、解凍後に受精・培養・胚移植のプロセスを経る必要があり、未受精卵1個あたりの妊娠率は高くない。そのため、一般的には10個前後の未受精卵を凍結しておくことが推奨されている。

 

——おおまかな治療の流れを教えてください。

2016年12月頭に初めて病院へ行き、検査をしてホルモンや排卵の状態をみました。検査では問診、エコー、血液検査を行いました。

検査の結果、AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣予備能の指標)が実年齢の平均値よりも低いことが分かりましたが、それ以外に問題は見つかりませんでした。

検査結果をもとにいつ採卵をするのかを話し合い、2017年3月末に採卵をしました。採卵に際しては、排卵誘発剤の注射を2回ほど打ち、内服薬も飲みました。採卵は30分もかからずに終わり、その直後に結果を聞き、採れた卵子の凍結をその場でお願いしました。

 

——排卵誘発剤の注射や採卵の痛みはいかがでしたか?採卵時に麻酔はかけなかったんですね?

痛みは特に感じませんでした。採卵時には少し痛みましたが、麻酔をかけなくてもあまり体に負担は感じませんでした。

 

——1回の採卵で凍結できた卵は2個だったとのこと。それを聞いたとき、どう思いましたか?

ショックでした。実際には他にも卵子はあったものの、凍結保存できるものはこの2つだったとのことでした。もう少し多くとれるかなと思っていました。ただ、自分の年齢と検査結果、食生活や睡眠のとり方などを考えると、現実はこういうことなんだと受け止めました。

卵子2個の写真

医師から受け取った卵子の写真。この2つの卵子が病院にて凍結保存されている。

 

——検査から凍結までにかかった費用の総額は?

約30万円です。今後、受精卵の凍結保管料として毎年5万円かかります。将来体外受精をすることになったら、そのための費用が追加でかかります。

 

——2回目の採卵を行う予定はありますか?

パートナーとの関係次第だと考えています。

 

——卵子凍結の一連のプロセスを終えて、いかがでしたか?

自分自身の年齢や現実的に望める妊娠の可能性などを目の当たりにして、現実を受け止めるという意味ではよかったと思います。

 

——卵子を凍結して、自分の気持ちや行動に変化はありましたか? 楽になった部分は何かありますか?

正直変化はなかったです。採卵できた個数が2個のみということもあり、気持ちが楽になったということもありません。でも、現実を受け止め、危機感が強くなりました。

 

——凍結卵子は45歳の誕生日に破棄されてしまいます。その時までにもしパートナーが見つかっていなかったら、ショックが一層大きくなるのでは?

それはそれでしょうがないと思います。しっかり考えなければならないタイミングでもあると思うので、年齢で区切るものよいことだと思います。

 

——社会的卵子凍結は女性の結婚・出産を遅らせるだけだから止めたほうが良い、と言う人もいて、実際に卵子凍結を止めてしまった病院もあります。利用者の立場ではどう思いますか?

私自身は余計危機感が強くなりましたので、決して安心感から結婚・出産を遅らせることになるということはないと思います。現実を受け止めるうえでも、人生の中で何を大事にしたいのか、改めて考えるという意味でも、よかったと思います。

 

——10年前の自分に何か言うことができるとしたら、早く卵子を凍結しなさい、と言いますか?

10年前の自分には卵子を凍結しろ、ではなく、自分と周りの人をもっと大事にしろ、といいたいです。そして現実的なパートナー選びをするように言いたいなと思います。

あとがき

卵子を凍結しても、安心はできない。「卵子を凍結する=将来子どもが産める」ということではないのだ。凍結卵子による妊娠率は極めて低い。思うように採卵できなければ、むしろ危機感や焦りが募るのかもしれない。

でも、その危機感が、自分の人生を見つめ直すきっかけとなる。子どもを持つこと、パートナーを持つことの意味を考えることになる。費用はかかるものの、不妊検査を一通り行うことで自分の妊孕力を多少なりとも知ることができる。不妊治療を始める前から、治療に関する知識も身につくであろう。だとしたら、これは決して妊娠・出産を先送りする行動ではなく、女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツの浸透をサポートする、有意義な取り組みなのではないだろうか。

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