私たちは、結婚しなくても子どもを持てる。

佐々木ののかさんインタビュー。

佐々木ののかさん

私たちは、結婚しなくても子どもを持てる。

ユニークな遺伝子を求める、ライターの佐々木ののかさんを取材。

取材・文:Coel運営チーム

掲載日:2017年11月20日

1年ほど前、「ユニークな遺伝子ください」というnoteで話題になった、ライターの佐々木ののかさん。彼女はまだ27歳で、これから様々な出会いがあるでしょうし、恋をするでしょうし、その相手と結婚して子供を持つ可能性もあります。でも、彼女は27歳(上記note執筆時は25歳)にして、今後どうしようもなく好きな男性ができたら、結婚や交際にはこだわらずに「あなたのユニークな遺伝子ください」とプロポーズすると宣言しました。

愛する男性が旦那に向いているとは限らないし、性交渉を持ちたい相手だとも限らない。このジレンマに陥った時、結婚や出産を延期したり、諦めたり、逆に恋を諦めたりする方がほとんどではないでしょうか。でも、彼女はそこで諦めるつもりはありません。全身全霊をかけて愛した男性の遺伝子を受け継いだ子を持ちたい、と叫ぶ本能に従うのです。

彼女の宣言は、選択的シングルマザーやそれを目指す多くの女性を励まし、勇気づけました。彼女はフリーのライターとして、様々な夫婦(新婚のラブラブなカップルを含む!)やシングルの女性を取材し、色々な愛・結婚・妊娠・出産の形に触れています。選択的シングルマザーのリアル、つまり、そのメリットもデメリットも知っています。それでもゆるぎない、ユニークな遺伝子への欲望。子どもを持ち、育てるということは彼女にとってどのようなことなのでしょうか。

佐々木ののかさん

フリーのライターとして活躍中の佐々木ののかさん。全くの素人から業界に飛び込み、ライターの仕事を獲得してきた力強い女性です。

ユニークな遺伝子を残すために、結婚が必要とは限らない。

——「ユニークな遺伝子ください」を面白く読ませて頂きました。公の場で、こんなことを高らかに宣言する若い女性がいるなんて衝撃的でした。佐々木さんにとって、子供を持つってどういうことなのでしょうか?ユニークな遺伝子を残すことですか?

元々、子供が欲しいと強く思っているわけではありませんでした。子どもはか弱くもろいもので、自分に育てられるのかなと思っていましたし、その正直さなんかに怖さも感じていました。でも、25歳から26歳にかけて身体の機能が変わったのか、急に「子供がほしい」「産みたい」と思い立ったのです。稲妻が落ちてきたかのようで、身体が産みたいと言っている気がしました。

当時、フリーランスになって1年程度経った頃で色々な不安もある中で、自分が後世に残せるものと言ったら子どもぐらいじゃないか、という思いもありました。

——子どもが欲しい、と思ったとき、同時に結婚したいとは思わなかったのですか?

元々は結婚願望が強いタイプでした。大学時代、付き合った彼氏は遠方の実家まですぐに連れて行きましたから。自分が思う理想の家族を作りたいと思っていました。

結婚観が変わったのは、勤めていた会社を病気で辞めた時。努力でどうにもならないという経験をしました。当時結婚したいと思っていた彼氏とも別れて、フリーランスとして働き始めたら、恋愛や結婚・家族関係の多様な姿と出会いました。いろいろな関係性があることを知り、結婚や出産の姿を模索する中で自分の考えも変わってきたのです。

私の場合は、“子育てを一緒にしたい相手”と“遺伝子をもらいたい相手”、“セックスをしたいと思う相手”がすべて異なる、というのが障壁になって結婚に踏み切れない。

端的に言えば、遺伝子をもらいたい相手とは一緒に暮らせないし、子育てを一緒にしたい相手とはセックスができないし、セックスをしたいと思う相手は結婚にまつわる要件を満たさないのである。

しかし、子どもはどうしても欲しい。

———「契約結婚、そしてシングルマザーへ「わたし、産みたい」にまっすぐな女性の実践の記録」より抜粋

理想の子育てと、それを実践する人に出会って。

——佐々木さんにとって子どもを育てることとはどんなことなのでしょうか? 

子どもと一緒に成長するという感覚なのかな。親が子に教えるというよりは、同じ目線で成長していきたいなと思っています。

——もし父親が最初からいなかったら、子供に関わる大人が一人減ることになりますが、誰がそれを補うのでしょうか?

私自身は、両親ともにいる家庭に育ち、強い愛情を受けて育ちました。でも、身近な大人が父・母だけという状況も時に息苦しいものだったんです。両親が思う「よい家庭」が必ずしも常に正しく、子どもにとって生きやすい環境になるわけではない。地域の人や友人など、親以外の身近な大人がいる環境が望ましいのではないでしょうか。

——そのような環境を実際に作ってシングルマザーになられた方と、展示会を開催されましたね。

はい、関西在住で、今年出産して長屋で友達と一緒に子どもを育てている選択的シングルマザーの女性がいます。彼女と一緒に「わたし、産んでみたい」という展示を行いました。彼女の妊娠経過の写真・動画や絵本を展示し、多様な恋愛観、血縁家族ではない「家族のようなもの」、結婚、じゃなきゃいけないの?、妊娠・出産のあり方・これからの子育てとコミュニティ、といったテーマでトークイベントを行いました。

色々な女性がこの女性のところにわ~っと集まってきて「(私も)産みたいんですけど・・・」と声をかけてくれましたし、モヤモヤを抱えている人が「えっ!やってよかったの(=選択的シングルマザーという道を選んでもよいの)?」と拍子抜けした反応をしたり。相手がいないけれど急に子供が欲しくなった方、お金がないけれど子供が欲しいという方、言い方は悪いのですが、「恋愛はコスパ最悪だから手っ取り早く子供を作る方法はないか?」なんて言う方・・・いろいろなパターンの方がいました。

——選択的シングルマザーを志向する方がたくさんいらっしゃるということですね。

夫婦生活に自信がないけれど子供が欲しいという人もいますよね。普段ブログを書いていても、「共感しました」「話を聞いてほしい」という方から連絡が来ます。私が自分のことを色々と書いているからか安心して、「そんなこと聞いていいんですか?」というようなことまで話してくれる方もいます。

やはり、結婚や妊娠、出産にまつわる古い概念が強すぎて、その外側に想像力が働いていないんだと思います。選択肢があれば、実際にそれを選択しなかったとしても楽になりますよね。

結婚や出産の姿は、対話が導いていくもの。

——もしも「ユニークな遺伝子」が見つからなかったら、子供は諦めるのですか?それとも、何とかして妊娠しようとするのでしょうか?

実際には、産むことにはそんなにこだわっていません。体験としてはできたらしてみたいとは思っていますが。(シングルでも実現できるようになったら)養子縁組や里親も選択肢としてあるのではないかと思っています。もし自分が産めるリミットに達した時、またはその前の段階かもしれませんが、一人で産むことよりも育てることを優先するかもしれません。

——とはいえ、良い出会いがあれば、“普通”に結婚して出産するかもしれませんよね。

“子育てを一緒にしたい相手”、“遺伝子をもらいたい相手”、“セックスをしたいと思う相手”、全てが一致する相手と出会ったら、もちろん!いわゆる普通の結婚・出産をするかもしれません。

これらが全て一致しなくても、組み合わせ次第ですよね。条件選択のカスタムができるようになれば、その分相手との対話が生まれると思うんです。私はこう思っているけれど、あなたはどう?と。今は、おそらく選択肢が1個で、結婚・出産はなんとなくこういうもの、というのがあって、話し合ってすり合わせることがないため齟齬が生まれています。対話のきっかけができると良いと思うんです。

——海外では、パートナーのいない独身女性が精子バンクを使って妊娠・出産しているケースがあります。日本には残念ながらありませんが、精子バンクという選択肢をどう思いますか?

すごくいいと思います!精子バンクがあればシングルマザーのみならず様々な人に新たな選択肢が与えられますよね。

先日、テレビ番組の選択的シングルマザー特集に出演したのですが、そこで共演したシングルマザーの3人は、精子提供者と(出産後も)緩い関係を築いていきたいという人たちでした。一方で、精子バンクの方が面倒くさくないという声もありました。精子提供者に気持ちが入り、一緒に育てたいと言ってくるケースもありますよね。それを求めていない女性もいます。

「ユニークな遺伝子ください」を書いてから、自称精子バンク男がたくさん近づいてきました。協力してくれる、と言って直接アプローチしてくるのは変な人ばかりです。性交渉を持つことしか考えていない。選択肢がないからといって妥協してそういう男性を頼らなければならないのはおかしいです。

——今後10年、佐々木さんにとって理想の人生を実現するためにどう努力していきますか?

私は(作家の)川上未映子さんがかっこいいなと思っています。作家としての成功に加えて、結婚して、子供を持って。自分の人生と家族としての人生を両立できるのが理想的だなと思っています。

私も書くことを中心に据えていきたいのですが、まずは後世に残るような作品を生み出すことが最優先です。今はフリーとしての働き方のバランスがとれてきたところ。30歳ぐらいまでは、作品を出し切っていきたいです。

とはいえ、一人で生きていきたいなんて思っていないので、「この人」と思える相手がいたら、出産はいつでもよいと思っていますよ。今のうちに、自分が産めるかどうかを知っておきたいので、不妊検査を受けるつもりです。できることが変わってきますからね。

結婚して幸せになれる人はそれでいい。どんどん幸せになってほしい。

でも、結婚に必要な要素が1つ欠けたからといって、ちょっと型からハミ出た人たちがいたからといって、それ以外の2人の全て何もかもがめちゃくちゃになってしまうのは悲しいじゃないか。

「普通」じゃなくても、お互いにとって1番良い方法をとって仲良くやっていけたほうがいいに決まっている。

たくさんの価値観や家族の形を届けて、ピッタリくるものを選び取ってもらえたらいい。

私は「普通」にハマれずに苦しんでいる人たちを、おこがましくも救いたい。

———「だから私は、家族と性愛」より抜粋

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