あなたの不妊の原因は子宮内の悪玉菌かもしれない。

子宮内フローラ検査の
Varinos株式会社インタビュー。

あなたの不妊の原因は子宮内の悪玉菌かもしれない。

子宮内フローラ検査のVarinos株式会社インタビュー

取材・文:Coel運営チーム

掲載日:2019年5月20日

腸内フローラという言葉を数年前からメディアなどでよく見かけるようになりましたが、その意味するところを正確に理解している方は少ないのではないでしょうか。最近では、不妊治療クリニックや患者さんのブログで子宮内フローラ検査というものを見かけるようになりました。一体フローラとは何なのか?そして、不妊治療にどう役立つのか?世界で初めて子宮内フローラ検査サービスの提供を開始したベンチャー企業、Varinos株式会社の桜庭喜行代表取締役CEOと長井陽子取締役CTOに疑問をぶつけてみました。

長井取締役CTO(左)と桜庭代表取締役CEO(右)。

——多くの不妊治療クリニックで子宮内フローラ検査の案内を見かけるようになりました。患者さんのブログでも話題になっています。どのような検査なのでしょうか?

これまでほとんど無菌だと考えられてきた子宮内に菌が見つかったのは4年ほど前のことです。善玉菌のことをラクトバチルス菌と呼びますが、膣内のラクトバチルス菌が胎児を感染症から守る役割を果たしていることは従来から知られていました。次世代シーケンサーを使うことにより、従来の細菌検査では検出されなかったデータが検出されるようになり、膣内のみならず子宮内にもラクトバチルス菌や他の菌が存在することが分かりました。そして、そのフローラ(細菌の集合体)の状態を見るのが子宮内フローラ検査です。

この検査では、子宮体がんの検査で使用する細胞採取器具を使い、子宮内あるいは膣内から試料を採取します。その後、弊社のラボにて分析を行い、結果を病院にレポートします。

 

米国での研究では、ラクトバチルス菌が着床時、そしてその後の妊娠継続に影響を与える可能性が指摘されています。不妊治療クリニックと弊社の共同研究によると、妊娠に成功した方と不成功だった方とでラクトバチルス菌の比率に差があることが分かりました。不妊治療中の方の子宮内フローラを見てみると、ラクトバチルス菌の比率の低い方が多かったのです。

——ラクトバチルス菌が妊娠に影響を及ぼしている可能性があるということですね。ラクトバチルス菌の比率が低い場合、その原因は何なのでしょうか?

生活習慣に問題がある場合や、性交渉等による悪玉菌への感染が要因の一つとして考えられます。また、年齢による影響もあり、40歳を過ぎると悪玉菌を持つ女性の比率が増加します。ただし、これには個人差があります。

——膣内と子宮内では菌の状態は異なるのでしょうか?

7-8割の方では菌が同じです。しかし、菌の量が100-1000倍程度異なっています。膣のほうが、菌の多様性が少ない傾向があり、子宮内では多様性が高い傾向があります。子宮内では菌の総量が少ないため、菌同士の生存競争が起こりにくく微量の菌まで見えやすいと考えられます。

Varinos社では、イルミナ社の次世代シーケンサーを2台装備している。

——月経周期上、検査を受けることのできるタイミングは決まっていますか?

生理期間以外であればいつでも受けることが可能です。

——この検査は現在の状況を示すものなのでしょうか?それとも、生まれ持った体質などを示すものなのでしょうか?

研究は始まったばかりなのですが、どちらについても示している可能性があります。今現在の菌の状況をスナップショットで写すものの、現在と1か月後の菌の状態は、特別なことを何もしなければ大きく変わりません。研究は始まったばかりなのですが、今のところ、人によって飼いやすい菌と飼いにくい菌があるということが分かってきました。

—— 結果が悪い、つまりラクトバチルス菌の比率が低かった場合、どのような治療が可能なのでしょうか?

ラクトフェリンのサプリメントを摂取することで改善することが可能です。弊社が自社でサプリメントも販売しています。人によっては、たった1週間の摂取で菌の状態が変わることもあります。悪玉菌の状態によって、治療の効果には差が出てきます。

不妊治療クリニックとの共同研究では、ラクトバチルス菌の比率の低かった患者さんに、抗菌剤、生菌膣剤のプロバイオティクス、ラクトフェリンなどのプレバイオティクスを組み合わせて摂取して頂きました。すると、ラクトバチルス菌の割合が増え、子宮内フローラが改善しました。その中で妊娠に成功された方もいらっしゃいます。

——不妊治療では検査結果がどのように利用されているのでしょうか?

体外受精を行う場合には、状態の良い時、つまりラクトバチルスが多い時に胚移植を行うことが推奨されます。また、流産や早産を防ぐ効果があるため、ラクトバチルス菌の比率が低い方は妊娠中もラクトフェリンのサプリメントを摂取し続けることをお勧めします。

不妊に繋がる病気とラクトバチルス菌の関係も指摘されています。ラクトバチルス菌があると膣内・子宮内のpHが下がり、雑菌が育ちにくくなります。逆に、無菌と言うのは実際にはとても危険な状態です。抗生剤を使うと悪玉菌を排除することができますが、ラクトバチルス菌も同時に排除されてしまい、結果的に悪い菌が入りやすくなってしまいます。ラクトバチルス菌があればかかりにくいカンジダなどの病気にかかりやすくなるのです。排卵障害の原因となりうるような卵管癒着も、悪玉菌が原因であることがあります。

—— 日本人ならではの菌の特性はありますか?

ラクトバチルス菌にも種が200程度あり、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガゼリ、という名前がついています。子宮の中だけを見ても10種ほどあり、白人に多い種、黒人に多い種があります。東洋人はその中間とみられています。女性一人一人によっても異なるため、異なるタイプのラクトバチルスのサプリメントを摂取しても効果が出ないということが起こり得ると考えています。

—— 生活習慣がラクトバチルス菌に影響を及ぼしている可能性があるとのことですが、具体的にどのようなことが悪影響を持つのでしょうか?

弊社で行った調査によると、ウォシュレットの使用頻度や喫煙の有無による影響が見られました。膣を清潔にすることは重要ですが、洗いすぎることはラクトバチルス菌の減少に繋がります。一方、入浴頻度や食生活、特にキムチ・チーズなどの発酵食品の摂取状況による影響を調べてみたところ、有意な差は見られませんでした。

このほか、月経周期が規則的な人ほどラクトバチルス菌の比率が高いという結果も出ています。これはホルモンのバランスとの影響があるのではないかと考えています。

——どちらの病院で貴社の検査を受けることができますか?

弊社の子宮内フローラ検査は現在、主要病院を中心に90箇所にて導入して頂いております。掲載許可を得た病院については、弊社HPに名前を掲載しておりますのでご確認ください。

——この検査で、体の状況について不妊以外にも何か分かることはあるのでしょうか?

ラクトバチルス菌はウイルスへの感染を防いでくれるものですので、ラクトバチルス菌が多いことは、がん、特に子宮頸がんの予防に繋がる可能性があります。子宮内膜炎や子宮内膜症、生理痛の大小に菌が影響している可能性を示唆する調査もあります。

また、閉経後、ラクトバチルス菌が減ると、おりものが増えたり匂ったりすることがあります。これはガードネラという悪玉菌の仕業です。

——検査で検出されたラクトバチルス菌以外の菌から分かることはありますか?

例えば、ウレアプラズマという菌があります。早産になりやすい人から検出されやすい菌とみられており、検出されないことが望ましい菌です。不妊治療を行っている女性の30-50%が持っている菌だと言われています。検出された場合には、薬によって治療することが可能です。

また、ラクトバチルス菌以外の善玉菌として、例えばビフィズス菌があります。皆さんも聞いたことがある名前だと思います。ラクトバチルス菌もビフィズス菌も乳酸菌の一種です。両者は共存することができますし、またビフィズス菌が単独で存在しうる可能性もあります。ビフィズス菌の研究もあまり進んでいないのですが、ビフィズス菌の比率が高い女性も妊娠・出産するという報告が出ています。

——ちなみに、精子の中の菌も調べられるのでしょうか?

精液の中にも菌がありますが、まだ研究段階です。これからいろいろなことが分かってくるのではないでしょうか。

——Varinosならではの強みはありますか?

元々、桜庭と長井は次世代シーケンサーの製造で世界最大のシェアを持つイルミナ株式会社に勤めていました。日本では特に医療分野で次世代シーケンサーの活用が遅れており、これを推進するためにVarinosを立ち上げました。

こうした経緯もあり、技術力、つまり検査の精度の高さには自信を持っています。子宮内フローラ検査の提供を世界で最も早く始めたので、数多くのデータが集まってきています。日本人ならではの菌の特性をつかみ、分析を行っています。

 

五反田に構えるVarinos社のラボの様子。

 

私たちは日本企業ですのでラボを国内に持っており、検査を行ってから最短2週間で結果を出すことができます。不妊治療中の患者さんにとっては、スピードが重要です。この点に加えて、輸送料金が安い分、検査価格もリーズナブルに設定している点が魅力だと考えています。

——今後の展望について教えてください。

現在は不妊治療中の方に多くご利用頂いていますが、将来的には治療前の方々、将来的に赤ちゃんが欲しいと考えている若い方々に検査を知ってもらいたいですし、彼ら・彼女らの妊娠への意識を変えていきたいと思っています。体外受精を受けている女性の平均年齢が40歳というのは欧米より約5歳も高く、危機的な状況です。このことが体外受精の成功率の低さに繋がっています。若いうちから正しい知識を持ち、自分から早めに病院へ足を運ぶよう促していく必要があります。Varinosでは個人向けの検査を開発することも検討しています。

現在の医療では、標準治療といわれるものが行われており、“みんな”に効く薬が承認されています。しかし、今後の医療は個別化され、一人一人に合うものに代わっていくはずです。例えば、ヨーグルトを食べてお腹を壊す人がいます。もしかしたら、その人が持つ菌は一般的な人の菌とは異なるものかもしれない。そうしたことを知り、それぞれに合った治療を行うものになっていくべきだと考えています。Varinosの検査でも個別化治療に役立つ情報を解析し、皆さん一人一人がより適切な治療を受けられることを目指していきます。

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