実際のところ、不妊治療をしたらどの程度の確率で子供ができるのでしょうか?
日本産科婦人科学会が全国の病院から集めている統計データと、病院毎に発表されている個別のデータの中から、皆さんの参考になりそうな数値を抽出してお伝えします。
タイミング法
タイミング法は自宅で行うことができますので統計データは存在しておりませんが、1回あたりの妊娠率は約3-5%(恵愛生殖医療クリニック志木)と言われています。
人工授精(AIH/IUI)
人工授精は病院で行うものの全国的な統計データは集められておらず、日本で何件の人工授精が行われているのかは不明です。
各病院にて、(おそらくその病院での臨床成績や医師の過去の勤務先での実績に基づき)記載している1周期あたりの妊娠率は以下の通りで、大体5-10%の範囲に収まっていることが分かります。
- 7-9%(浅田レディースクリニック)
- 大体5-10%くらい(東京歯科大学市川総合病院)
- 約5-10%(恵愛生殖医療クリニック志木)
- 5-12%(銀座レディースクリニック)
- 4-10%。更に、クロミッド(セロフェン)と併用で8-13%、排卵誘発剤の注射と併用で13-18%との報告がある(両角レディースクリニック)
言うまでもなく人工授精の成功率は年齢や個人の状況によって大きく異なります。
年齢別のデータとしては、銀座レディースクリニックが2014年に行った660回の人工授精の結果を公表しております。(→元データはこちらへ)
それによると、1回あたりの妊娠率は、35歳以下が14.0%、36-39歳が6.4%、40-43歳が6.5%、44歳以上が1.1%となっており、35歳前後を境に妊娠率に大きな差が見られます。
実施者数あたりの妊娠率、つまり、人工授精を(何回か)行って妊娠できる確率については、35歳以下が22.5%、36-39歳が16.3%、40-43歳が16.9%、44歳以上が10.5%となっています。
人工授精を何回か行って妊娠できる確率は20%前後、と考えておきましょう。
ちなみに、人工授精の成功率を日本一、とHPに記載している大阪の都竹産婦人科医院の場合、1周期当たり妊娠率は35-38%で、人工授精にて妊娠した人の91%が2回目までで妊娠したとのこと。
非常に高い数値です。どんなノウハウがあるのか気になりますね。
尚、東京都民の方は、女性が検査開始時に34歳以下で、かつ男女ともに不妊検査を受けた場合に限り、不妊検査・タイミング法指導・人工授精の費用のうち最大5万円が助成されます。
年収制限なし!です。
体外受精等へのステップアップの考え方
はらメディカルクリニックによると、人工授精で妊娠する方の約90%が4-6回目までで妊娠しています。
この回数を1つの目安として、ステップアップすることが推奨されています。
体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)
体外受精・顕微授精に関しては、日本産科婦人科学会にて集計・公表しているデータが参考になります。
574の施設にて、2014年に行われた393,745周期の体外・顕微授精のデータです。
新鮮胚(卵)を用いた治療成績(92,269周期、うち純粋な体外受精88,888周期)
- 移植あたり妊娠率:23.0%
- 採卵あたり妊娠率:11.6%(全胚凍結周期を除く)
- 妊娠当たり流産率:26.4%
- 移植当たり生産率(=分娩率):16.0%
採卵当たり妊娠率は、移植当たり妊娠率よりも低くなります。これは、採卵後に受精・培養がうまくいかず移植できない卵子があるためです。
凍結胚を用いた治療成績(157,229周期、うち融解胚子宮内移植)
- 移植あたり妊娠率:33.5%
- 妊娠当たり流産率:26.8%
- 移植当たり生産率(=分娩率):23.1%
顕微授精を用いた治療成績(144,247周期)
1. 射出精子を使って純粋な顕微授精(ICSI)を行った場合の治療成績
- 移植あたり妊娠率:18.9%
- 採卵当たり妊娠率:8.5%(全胚凍結周期を除く)
- 妊娠当たり流産率:28.6%
- 移植当たり生産率(=分娩率):12.7%
2. Split法(採卵数が十分な場合に、体外受精と顕微授精を同時に行う)の治療成績
- 移植あたり妊娠率:24.2%
- 採卵当たり妊娠率:17.3%(全胚凍結周期を除く)
- 妊娠当たり流産率:23.8%
- 移植当たり生産率(=分娩率):17.5%
体外受精・顕微授精共に、移植当たりの妊娠率は20-30%、そのうち3割弱が(通常の妊娠でも同水準ですが)流産するという状況です。
採卵のタイミングから見ると、採卵当たり妊娠率は10-20%まで下がりますし、そもそも採卵を試みても結果的に1個も卵子が取れないケースもあります。
さらに、これらは全患者、つまり様々な年齢の方の平均値であり、年齢が上がるほど妊娠率はさらに低下するということを頭に入れておいてください。
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元データをご覧になりたい方は、以下をご覧ください。
- 日本産科婦人科学会「平成27年度倫理委員会 登録・調査小委員会報告(2014年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績および2016年7月における登録施設名)」
- 各病院のHP(上記病院名をクリックすると、元データの記載されたページに飛べます)
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