ミトコンドリアの力で妊娠(できるかも)

先週ニュースになったミトコンドリア注入による卵子の質の向上について、詳しく調べてみました。(前回の記事はこちら。)

誰が開発した手法なのか?

この方法の商業化を実現しているのは、アメリカの新興上場企業、OvaScience社。(HPはこちら。)

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(OvaScience社HPのトップ画面。)

患者自身の卵巣組織からミトコンドリアを採取し、顕微授精の際に精子と共に卵子内に注入する手法をAUGMENT treatment(オーグメント療法)と名付けています。

元々この手法は、ハーバード大学での基礎研究により実証されたもの(出所:HORACグランフロント大阪クリニック)。

1990年代に、Harvard Medical SchoolとMassachusetts General Hospitalの研究者チームが、母体の卵巣内に卵子の前駆細胞(EggPC)と呼ばれる新しい卵子の供給源を発見しました。

その後、OvaScience社の創業者の一人であるTilly博士が、EggPC細胞が成熟した卵子となり、卵子の供給を補うこととなる可能性、また、EggPC細胞がミトコンドリアのような新鮮な細胞成分の源となることを発見しました。

さらに、EggPC細胞からミトコンドリアを抽出し、顕微授精時に精子と共に卵子に注入することにより、卵子の質を高め、授精成功率を高めることができました。(出所:OvaScience社HP、10-Kを翻訳)

これを技術として商品化し、現在はカナダ、パナマ、中東、スペイン、日本のクリニックとの提携により実施しています。

日本では大阪のHORACグランフロント大阪クリニックのみ。

胚の質が悪くなかなか妊娠できない人に対し、約250万円の費用で施術しています。

そして、日本で初めて、この手法により妊娠した患者さんが出たため、ニュースになりました。

安全な手法なのか?

生殖医療にかかる規制は国によって異なります。よって、オーグメント療法に関する規制も様々。

アメリカでは、OvaScience社がFDA(食品医薬品局)に申請を行ったところ、IND(新薬臨床試験開始)申請を出すようにと指示があり、その後OvaScience社はアメリカでの承認よりも海外での承認・実施へと方向転換しました。(出所:OvaScience社10-Kを翻訳)

私はこうした行政の仕組みについては詳しくありませんが、申請の手間や期間などを考慮して、より早く実施が可能な海外へと先に目を向けたのではないかと想像します。

日本では昨年、臨床研究を行うことが認められました。

他人のミトコンドリアではなく、本人のミトコンドリアを使う限りにおいては、安全性・倫理性に問題はないとの見方が大半です。

しかし、この手法によって生まれた子供は世界でたった30数人。それも、2015年から始まったばかりなので、どの子供もまだ赤ちゃんで、成長の過程で問題が発生しないかどうかは未知の状態です。

よって、時期尚早との見方もあるのですが、患者としては少しでも妊娠する可能性が高まるなら、もし現時点で分かっている副作用等がないと言われたら、やってみたいと思うかもしれません。

先日のニュース記事ではこうした背景が曖昧だったので、この療法をネガティブに捉えてしまいましたが、今はとてもポジティブに受け止めている私です(ー ー;)

 

 

実際、妊娠率はどの程度上がるのか?

2016年6月時点のOvaScience社公表資料によると、

270人超の女性がオーグメント療法を受け、30人の赤ちゃんが生まれたそうです。

彼女たちは皆、過去に体外受精を(人によっては複数回)行ったが、妊娠できなかった人たち。

同じような条件の女性が、更に通常の体外受精を行うことで妊娠できる確率が1-2%なのに対して、オーグメント療法を実施した女性たちの妊娠率はUAEで18%、カナダで26%と極めて高くなりました。

母数がまだまだ少ないですが、今のところはこの療法にチャレンジした人が通常よりも高い確率で妊娠できているようです。

不妊治療の将来

OvaScience社はオーグメント療法以外にも

  • OvaPrime:卵子の数を増やす手法
  •  OvaTure:ホルモン注射なしで実施する次世代体外受精

の研究・開発を進めています。(出所:OvaScience社HPを翻訳)

同分野に着目している研究機関・医師は世界中に大勢おり、不妊という現代社会の大きな課題に対し、新たな解決策が猛スピードで見いだされようとしていることを感じます。

私たちの想像もつかないようなモノやコトが、不妊の解決に繋がるかもしれない。

倫理的な問題をうまく解決しながら、子供を持ちたい誰もが子供を持てる世界がいつか実現されたならばと願います。

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ミトコンドリアの力で妊娠(できるかも) への1件のフィードバック

  1. キングスブリ・ロゼル のコメント:

    ご執筆者の方へ

    OvaScience社日本広報を担当しておりますロゼルと申します。

    今回OvaScience社の不妊治療に詳しく
    注目していただき、誠にありがとうございます。
    記事を拝見させていただきました。
    一つだけ誤植のご修正をお願いしてしまい恐縮ですが
    OvaTuneをOvaTureにご変更いただくことはできないでしょうか。

    今後、OvaScience社について何かご説明できることがございましたら
    ご連絡いただければ幸いです。

    どうぞ、よろしくお願いいたします。

    ロゼル

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